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スタッフブログ

松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.1 二色の美

二色ふたいろの美
会場:展示室4
会期:2022.04.26 火 ~ 07.24 日

私たちは様々な色に囲まれて生活を送っています。
その色の多くは、理想の美を表現することを求めた人類が自然物から取り出した、あるいは自然物を素材に研究を重ね、生み出した人工の色です。中国陶磁の色もそうした美の追及の積み重ねによって生まれました。また、色彩表現における重要な要素に、色や彩度、明暗の差―コントラスト―があります。本展では、館蔵の中国陶磁コレクションより、磁州窯と景徳鎮窯の作品を中心にコントラストが美しい二色のうつわをご紹介いたします。二色という限られた色での多様な表現とその変遷をご紹介しつつ、古代中国で生まれ私たちの生活に根付く色彩観の基である「五行説」にも目を向けてみようと思います。
二色がめぐりあう美を楽しみながら、古代から連綿と受け継がれてきた色彩感覚に想いを馳せていただければ幸いです。

■白 ー 陶磁器の基本色 ー

五行思想で白は「金」に属します。方角は日の沈む「西」、季節は草木が枯れる「秋」に対応するため、死のイメージと結びつきました。一方で白い雲や雪の色ということから、純粋さや清らかさといった意味も持ちます。白磁が登場して以降、コバルトの青が映える青花、コバルトの代わりに銅を呈色剤として紅い発色を得た釉裏紅、数種類の色釉で上絵付けを施した五彩などが発明され、中国陶磁のバリエーションは大きく広がりました。


白磁刻花蓮花文盤
北宋時代 定窯

■二色の出会い

磁州窯では、白釉陶器の白泥層に彫り文様を施すことで、定窯白磁などの彫模様に比べ、はっきりとした文様表現を生み出すことに成功しました。磁州窯の文様表現はコントラストを基準に発展していきます。

白釉掻き落とし技法から、さらに明確なコントラスト表現を可能にしたのが、白地黒掻き落としです。 白泥の上にかけた鉄絵具を掻き落とすことで、文様を表します。白い背景を得たことで、黒い文様がクッキリと浮かび上がります。

白地黒掻落牡丹文瓶
北宋時代 磁州窯

■ 黒 ー 古代の崇高な色 ー

黒は五行説では「水」に対応し、季節は「冬」方位は「北」を示します。 古代中国の夏、秦では崇高な正色とされ、官服、礼服、祭服は全て黒色でした。秦の始皇帝は五行思想と王朝交代のリズムを結び付け、火徳の周を破り中国を統一した秦(水徳)の正統性を示したのです。

重厚な黒色をまとった陶磁器は無彩であることから、かえって素材の奥深さを感じさせます。

黒釉掻落花卉文四耳壺
金-元時代 磁州窯系

■ 青 ー 伝統と革新の色 ー

青は五行思想では「木」に対応し、季節は「春」、方角は「東」、空や水、瑞々しい新緑のイメージから清廉潔白の意味を持ちます。 青いやきものの代表である青磁は灰釉陶器の誕生に始まり、古くから現代に至るまで作り続けられ時代を問わず愛好されました。

景徳鎮窯で生まれた青花は、国際的な交流によって元時代に始まった比較的新しいやきものです。 元時代に中国を統治したモンゴル人にとって、神聖な天空の色である「青」、空に浮かぶ雲や遊牧民の食事に欠かせない乳製品の色である「白」は特別な色でした。

青花魚藻文大盤
元時代 景徳鎮窯

■ 黄 ー 皇帝の色 ー

黄色は五行思想において、万物を生み出す「土」に対応し、方角は「中央」を示すことから、皇帝のシンボルカラーとされました。 唐時代より黄系色が皇帝専用の色と定められ、清朝の終焉まで、皇帝のイメージと強く結びつきました。例えば、明・清時代の皇宮である紫禁城の屋根は黄色い瓦で覆われています。

陶磁器においても特別な色として扱われ、明・清時代には皇室専用の食器として、黄色の磁器が使用されました。

黄地緑彩龍文鉢
清時代「大清康煕年製」銘 景徳鎮窯

■ 赤 ー 伝統的なハレの色 ー

赤色は五行思想において「火」に対応し、方角は「南」、季節は「夏」です。 古くから漢民族が好んだ色で、生命力やその再生、祝賀の象徴として用いられました。古来より中国では土器·陶器の顔料として、赤いベンガラ(赤色酸化鉄)が使われています。

元時代から明時代初期にかけては釉裏紅磁器が、明時代中期の嘉靖年間以降には紅彩磁器が登場します。 清時代になると、技術進歩により酸化銅を呈色剤とする釉薬の発色が安定したことで、様々な赤い器が生み出されました。

釉裏紅牡丹文大盤
明 洪武期 景徳鎮窯

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